花とは似ても似つかないキノコ類だが、一部のキノコ抽出物にはハチの群れを破滅させるウイルスからハチを守る可能性があることが、新たな研究で明らかになった。
英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に4日に掲載された研究論文によると、ハチに危害を加える最も破壊的なウイルスの一部に対し、キノコ類の抽出物が効果的な予防接種となり得るという。
キノコ抽出物は人の場合には、すでに複数のウイルスに対して使用されており、論文著者らはキノコ類にはハチに対しても同様の効果があるのではないかと推論した。
研究者らは、どのキノコ類を被験ハチに与えるかを絞り込むことから始めて、最終的にはツリガネタケから採れる海綿状物質である「暖皮(だんぴ)」と、樹木に棚状の形態で生成する薬用キノコ「霊芝(れいし)」に焦点を絞った。
研究では、これらの抽出物が、ハチにとって特に破滅的なことが証明されている2種類のウイルスであるチヂレバネウイルス(Deformed wing virus、DWV)とレイク・サイナイウイルス(Lake Sinai virus、LSV)からハチを保護することができるかどうかを調べた。
初期の実験は実験室内で行われ、1つのハチの集団にはキノコ薬品が、別の集団には砂糖のシロップ液が与えられた。その結果、キノコ抽出物が「著しい抗ウイルス活性を発揮した」ことが示された。
さらに実験は屋外に移され、研究者らは女王バチ1匹と働きバチ約8000匹からそれぞれ構成されたコロニー30個を作成し、すべてのハチが自由に餌を摂取できるようにした。
そして蜜を採集するハチの一部にはキノコ抽出物が、別のハチには砂糖シロップが与えられた。その結果、砂糖シロップが与えられたハチと比べて、キノコ抽出物を与えられたハチのウイルスの減少率はDWVが79倍、LSVに至っては桁外れの4万5000倍だった。
研究論文の共同執筆者で、米ワシントン州立大学(Washington State University)昆虫学部教授のウォルター・シェパード(Walter Sheppard)氏は、この発見はハチのコロニー保護を求める養蜂家など、現場での実用に有望だとしている。
同氏は「今後も実験を行って、ウイルスのレベル減少が直接的な抽出物の抗ウイルス活性によるものなのか、それともハチの免疫機能の向上によるものなのかを見極める」と述べている。