今年の県内のマツタケ生産量は県の推計で五・五トンで、平成以降で五番目の不作となったことが、六日に県林業総合センター(塩尻市)で開かれた「信州まつたけシンポジウム」で報告された。
県信州の木活用課や同センター特産部によると、県内のいずれの地域も「昨年と比較しておおむね一~二割程度と不作」。地域別の生産量(推計値)は南信三・七トン、東信一トン、中信〇・八トンの順で、品質は虫食いが多く、良くなかった。
原因は「マツタケが発生する時期の気温の上昇と少雨」と分析。九月上旬に気温が上昇し、その後も平年以上で推移した上に雨が降らず、マツタケの成育に大きな影響を与えた。
県産マツタケは二〇〇六年から一六年まで生産量全国トップ。一七年は五・一トンで不作だったが、昨年は四二・一トンの豊作だった。最も生産量が多かったのは一〇年の八五・一トン。
シンポジウムはキノコ生産者らでつくる県特用林産振興会が毎年開き、各地の会員ら九十人が参加した。マツタケの増産に向けた活動発表もあった。
(一ノ瀬千広)
◆返礼品や観光にも痛手
豊丘村を中心に全国有数のマツタケ産地として知られる下伊那郡だが、今年は記録的な不作となっている。ふるさと納税の返礼品に活用している自治体も多く、生産地では影響が広がっている。
例年なら収穫期の終わりに当たる十一月中旬、豊丘村の飯伊森林組合直売所では、ようやくマツタケが並び始めた。数は少なく、売り場の半分も埋まらない。組合員は「やっと出てきたけど、例年よりずっと少ない」と嘆いた。
不作に見舞われた同村では、本年度のふるさと納税のうち、約一億円分の返礼品にマツタケが含まれていたが、全て発送できなかった。隣接する松川町や喬木村でも、返礼品のマツタケを発送できなかったという。
豊丘村はマツタケの発送を来年度に持ち越すことを決定。これに伴い、来年度は、マツタケを返礼品とした約一億円分の寄付の募集は断念する。納税額への影響が懸念されたが、村が発送したおわびの文書には、応援や心配の声が多く寄せられ、既に始まっている来年度ふるさと納税の募集も順調だという。同村の担当者は「マツタケとセットで送っていた果物や細かなサービスを通して町のファンになってもらえた。本当にありがたい」と話した。
不作は、マツタケの収穫体験や料理を売りにした観光にも影を落としている。
豊丘村内でもマツタケの収穫量が多いことで知られる堀越区では、区民らが地元のマツタケ料理を味わえる「堀越まつたけ観光」を区民会館で毎年開いている。例年はすぐに予約で埋まるほどの人気だが、今年は四十七年間の歴史で初めて、一日も営業できなかった。
マツタケ料理や収穫体験が楽しめる松川町生田の「まつたけ小屋 梅松苑」では、収穫体験にマツタケのコース料理、コテージへの宿泊をセットにした豪華プランを今年から始めたが、マツタケが足りず、ほとんど提供できなかった。シーズンの売り上げが全体の三分の二以上を占めるだけに大きな痛手。支配人の下沢京子さんは「赤字を取り戻さないと。来年は期待したい」と話した。
(飯塚大輝)