福島県いわき市のJR泉駅近くにたたずむギャラリー「アートスペース泉」(青木京子代表)で7月1日、30年近くにわたりキノコを中心に身近な植物を面相筆と水彩絵の具で描き続ける冨田武子さん(79)=同市在住=の「ボタニカルアート展」が始まる。
冨田さんは東京・麻布で生まれ、戦時中、父の実家があったいわき市に疎開した。市内の小学校に入学し、終戦後、家族といわきに住み着いた。東京の武蔵野美術大学で西洋画を学び、卒業後はいわき市内の中学で美術教師をしながら、自然豊かないわきの里山などを歩くうち、キノコの魅力にとりつかれた。
「キノコはいろんな形があって、色も多彩で、森に入ると突然出てくる神秘性があります。日本で確認されたキノコは2000種弱ですが、まだまだ未発見のものも多いのです」と言う。定年退職後にキノコ大好き仲間と同好会を作る傍ら、植物画を本格的に描き始めた。マクワの種などから生えてくるキツネノヤリタケ、落ち葉から出てくるハナオチバタケ、林業にとって天敵のナラタケモドキ--などB4サイズで描いた植物画は300点近くに上った。
東京電力福島第1原発事故の影響で、もう一つの楽しみだったキノコを食べることは当分できないが、「キノコの魅力は変わりません」と笑い、続けた。「植物が持つ美しさを表現するのは難しい。敗北感を覚えながら楽しんでいます」