実りの秋が訪れ、キノコ狩りも最盛期を迎えるが、気をつけたいのが毒キノコ。専門家でも見分けが難しい種類があり、9~10月には毒キノコによる食中毒が多発している。関係者は「採らない、食べない、売らない、人にあげないで」と注意を促している。
厚生労働省によると、2012~16年に全国で起きた毒キノコの食中毒は計198件(患者数564人)。月別では9月が53件(158人)、10月が121件(357人)で約9割を占めた。県内では同じ5年間で、みなかみ町や渋川市などで5件(18人)あり、3件(12人)が9月と10月に集中した。
日本きのこ研究所(桐生市)顧問の中沢武さん(68)によると、キノコの毒による症状は(1)肝臓や腎臓の障害(2)神経系に作用(3)胃腸を刺激(4)手足の末端に激痛――の4種類。
(1)のキノコの代表格は「殺しの天使」の別名があるドクツルタケで、1本で致死量の毒がある。(2)はマジックマッシュルームとも呼ばれ、幻覚が出る。(4)は食べてから3週間ほど後に発症し、痛みが1カ月続くこともあるという。
最も多いのが(3)で、下痢や吐き気の症状が出る。シイタケやヒラタケによく似たツキヨタケ、クサウラベニタケ、カキシメジの3種類を間違って食べる例が多い。クサウラベニタケは、県内で「イッポン」と呼ばれる食用のウラベニホテイシメジに似ており、中沢さんは「群馬のキノコ狩りと言えばイッポン。注意が必要」と言う。
毒キノコを食べてしまったら、ぬるま湯を飲み、口に指を入れて吐く。しかし、これはあくまで応急処置で、中沢さんは「早く医師に診てもらう方がいい。キノコも持参してほしい」と話す。
言い伝えにも注意が必要だ。「鮮やかな色は毒がある」「軸が縦に裂けるキノコは食べられる」「ナスと一緒に料理すれば食べられる」「塩に漬ければ食べられる」などは迷信で、例外も多い。
今夏は長雨だったため、キノコが豊作になる可能性があるという。中沢さんは「毒キノコかどうかを素人が判断するのは危険。怪しいキノコは食べないで」と呼びかける。県によると、県林業試験場ではキノコの種類の判別もしている。
県内では6年前の福島第一原発事故の影響で、沼田市やみなかみ町など7市町村で野生キノコの出荷制限が続いている。キノコは放射性物質を吸収しやすいとされ、県は自分で食べる場合も、市町村での検査を勧めている。