扇山(1138メートル)の南斜面に暖かな日差しが降り注いだ2月下旬の週末、その中腹にある「大月エコの里」では「シイタケ植菌体験」が開かれた。首都圏からの体験者や地元の人たち20人余りが、ナラやクヌギの原木に電気ドリルで穴を開け、シイタケ菌が着いた種駒を金づちで打ち込んだ。最初は怖々とドリルを手にしていた体験者も、30分もするとすっかり慣れ、地元の人たちと雑談しながら作業を楽しんでいた。
バブル経済の崩壊で宅地開発の計画が頓挫し、予定地だった約10ヘクタールが2004年に大月市に寄付されたのが大月エコの里の始まり。荒れ地を美しく豊かな里山に育て、地元住民と都市で暮らす人たちの交流の場として発展させ、地域振興にもつなげたい。そうした活動に賛同する人たちが集まって「おおつきエコビレッジ」が生まれ、翌年、NPO法人として発足した。
地元に住み、東京都の八王子市職員時代から参加している山田政文理事長(66)は「放置された土地がごみ捨て場になったり、霊園開発に転用されたりする心配もあった。自然と共生する環境都市づくりという市の方向性などから、『エコ』がキーワードになった」と振り返る。