福島市に研究開発拠点を置く医療機器製造・販売「イービーエム」(本社・東京都)は、エノキダケやエリンギなどキノコを素材にした手術トレーニング用の人工血管モデルを開発した。同社は医療評価用としてキノコを活用するシステムを特許出願した。
キノコを使った人工血管モデルは、心臓の冠動脈バイパス手術で肋骨(ろっこつ)の内側にある細い血管を剥がしたり、切ったりする手技の訓練用として開発された。
朴栄光社長は繊維質で強度があり、加工しやすいキノコの特性に着目。水分を多く含み導電性があるため、電気メスによる手術訓練に適していた。
同社はエノキダケやエリンギの性質研究、形や堅さなどの加工を重ね、導電性があり、しなやかで細い人工血管の再現に成功した。今後、製品化を目指し、二年以内に国内で年間五千~一万個の販売を見込む。中国、インドなど海外市場も視野に入れる。
福島医大心臓血管外科学講座教授で日本心臓血管外科学会理事長の横山斉氏が五日、福島市にある研究開発拠点FISTを訪れた。
横山教授は実際に電気メスで、エノキダケの人工血管の触感を確かめ、「本物の血管に限りなく近い。ここまでのものは見たことがない。若手のトレーニングに活用できる」と語った。
イービーエムは心臓外科手術訓練シミュレーターを開発・販売している。第二回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)で福島民報社賞を受けた。