菌根類という一群の土壌微生物がいる。植物の根に棲み付いて共生するのだが、その性質や役割については謎が多かった。今回の研究は、この菌根類が森林の安定や変化について果たす役割についての京都大学の報告である。
菌根類は土壌中に糸状菌を持ち、それが植物の根の表面または内部に着床した菌類である。代表的な例としては、キノコに菌根類が多い。全てのキノコが菌根類なわけではないのだが、例えばマツタケやホンシメジ、それにトリュフなども菌根類である。高級なキノコばかりなのは偶然ではなく、共生する性質のために人工栽培が難しいためである。
さて、植物は自身の生える土壌環境に影響を与える性質を持つ。土壌環境が変化することで、その場所で生えることのできる植物種が変動することも稀ではない。これを専門用語では植物土壌フィードバックという。
森林では多くの樹木が安定的に共存していると同時に、継時的に見ていくと、日当たりを好む樹木から日陰でも生育できる樹種へと順次置き換わっていく。これを植生遷移という。
さて、この植生遷移に、植物土壌フィードバックが関わっており、そしてそれには菌根類が大きな役割を果たしているのではないか、というのがこの研究の着眼点である。
規模が大きくなるため、野外実験を行うと制御不能の環境要因が増えすぎるという問題があり、実験は生態系を土から作っていくことで行われた。結果として、性質のマッチする菌根と植物の組み合わせの場合、成長が促進される傾向がみられ、また逆の場合は成長が悪くなる傾向が見られたという。