実りの秋を迎え、キノコ狩りを楽しむ人も増える一方、毎年この時期は毒キノコによる食中毒が多発しています。今年は、今月1日までに全国で12件発生。素人が食用のキノコと見分けるのは難しく、消費者庁は注意を呼びかけています。
今年9月中旬、三重県の75歳の男性が、食用キノコの「クロハツ」に似た毒キノコの「ニセクロハツ」を食べたとみられる食中毒で亡くなった。自分で採ったキノコを鍋の具材として煮て食べたところ、下痢や嘔吐(おうと)などの症状があらわれ、首から肩にかけて痛みも発生。入院したが、約1週間後に命を落とした。
厚生労働省によると、毒キノコによる食中毒は、2012~17年に214件発生。患者数は608人で、うち1人が亡くなった。患者の6割にあたる382人が、10月に発症している。自分で採るだけでなく、知人がくれたものが毒キノコだったケースもあった。
食中毒が最も多い毒キノコは「ツキヨタケ」(写真①)で、食用のシイタケやヒラタケ、ムキタケと間違えられることが多い。食後30分~1時間で嘔吐や下痢などの症状が出る。「ドクササコ」(同②)は、食用のナラタケやホテイシメジに似ている。食べると手足の先が赤く腫れて、激痛が1カ月以上続く。
消費者庁によると、今夏は気温が高くて雨も多かったため、毒キノコが例年よりも多い可能性があるという。スマートフォンや図鑑の画像を見て自分で判別しようとする人もいるが、キノコは生育条件によって色や大きさ、形が異なる場合もあり、見分けるのは簡単ではないという。
岡村和美長官は「図鑑と見比べるだけの素人判断をしないことが大切。少しでも不安があれば、専門機関や保健所に相談してほしい」。キノコを食べて体調が悪くなったら、すぐに医療機関を受診することを勧めている。