外国人が増え、52ある宿坊の多くは英語を話すスタッフの確保などに追われる。総持院(そうじいん)は4年前、さらにハラール認証を取った。イスラム教で禁じられた食材は使っていないという証しだ。最近はマレーシアなどイスラム圏からの観光客も見かけるが、多くは日帰り。「そんな人も来られる環境を」と副住職の宮田明聡さん(27)は話す。
肉や魚を使わず野菜が主体の精進料理は、ハラールへの対応は難しくなかった。それより、「精進料理は日本料理と全く違う」と戸惑ったのが料理長の河上徹さん(48)。京都の日本料理店で働き、3年前に総持院へ。かつおだしは使えず、昆布や乾燥シイタケの戻し汁を使う。臭いがきついネギやニンニクも御法度。味が薄くなるのは手間で補った。食材を炒めてから炊く、油で揚げてから炊く。「外国人にもおいしい精進料理。いまはそれに一生懸命です」
高野山を支えてきたのが、職人たちの手仕事。堂宮大工や表具、数珠、石塔、線香、法衣、高野槇(こうやまき)……。信仰と伝統の世界だけに、外国人の影響はまだ大きくない。