大分県産の原木乾シイタケの輸出が伸びている。県椎茸(しいたけ)農協の2017年度(17年2月~18年1月)の輸出量は約6900キロで、16年度の3倍に増加。中華料理店を新たな販売先として開拓したことで、香港を中心に輸出が急増した。「原木栽培」「無農薬」という生産手法が、高級感と安全性を求める富裕層に支持された。県内の卸売業者にも海外展開に力を入れる動きがある。
県椎茸農協が取り扱うのは原木栽培した乾シイタケ。17年度、香港や台湾、英国、米国など14の国と地域に輸出した。
特に香港では、日本の商社を介して中華料理店に業務用の販売を始めた。中国産乾シイタケは菌床栽培が主流。県産品の原木栽培は珍しく、質の高さが評価されて高級食材としてメニューに取り入れられているという。17年度の香港への輸出量は5032キロで、16年度(852キロ)の約6倍と大幅増となった。
英国への輸出も622キロと、16年度(267キロ)に比べ2・3倍となった。欧米の消費者は食の安全を重視する考えが強い。無農薬有機栽培を示す第三者認証「有機JAS」の産品を中心に売り込んだところ好評を得た。
県椎茸農協以外でも輸出に力を入れる動きが出ている。乾シイタケ卸小売りの姫野一郎商店(竹田市)は17年からシンガポールへの売り込みを本格化した。日系百貨店で展開し、18年の春節(旧正月)商戦(約1カ月)では、約140キロを売った。販促応援に足を運んだ姫野武俊社長(48)によると、上級品の「花どんこ」などの売れ行きが好調。「国内では贈答用の高級商品の需要が落ち込んでいるため、新たな販売先として有望。リピーターもできた」と手応えを感じている。
ただ、輸出量は県全体の生産量からするとまだ少ない。県椎茸農協が入札会で取り扱う量は年間約500トン。直接販売量は同約95トンで、輸出量(約7トン)は1割に満たない。同農協の阿部良秀組合長は「今後の国内の人口減少を考えると、海外市場の開拓は重要。18年度は7トンの維持を目標にし、将来的には直接販売の1割程度まで輸出を増やしたい」と意気込んでいる。