キノコを日常的に食べれば腸内環境が改善する-。キノコ生産・販売大手のホクト(長野市)は、キノコ類の継続的な摂取が腸内細菌のバランス改善や肥満抑制効果につながることを証明するため、検証実験を行い、名古屋市で17日に開かれた日本農芸化学会で検証結果を発表した。実験はマウスで行ったため、同社は今後、ヒトでの影響を調査するという。キノコを使った健康関連商品の開発や、料理で活用する方法も紹介していく。
腸内環境とは、善玉菌や悪玉菌と呼ばれる腸内細菌の集団「腸内フローラ」の状態のこと。善玉菌は身体に良い影響を及ぼす乳酸菌やビフィズス菌などで、悪玉菌は病原性大腸菌など悪い影響がある菌を指す。動物性脂肪を多く含む現代の食生活は、腸内環境に悪影響を与えているとされ、食生活や生活習慣の乱れが悪玉菌の増加につながるといわれる。
同社は、東北大大学院農学研究科の都築毅准教授とともに、キノコの摂取量と腸内環境の改善との相関関係を調べるため、マウスを使って検証実験を行った。
実験は、国内で多く消費されているエノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、マイタケ、エリンギの5種を加熱処理した乾燥キノコで実施。脂肪やコレステロールを多く含む高脂肪飼料と乾燥キノコを含ませた飼料を4週間にわたり、個別に与え続けて比較した。
同社によると、飼料を餌にしたマウスに比べ、乾燥キノコで飼育したマウスは、腸内の菌全体に占める乳酸菌やビフィズス菌の割合が増加したという。飼料のマウスは2・5%で、乾燥キノコを0・5%(人間の摂取量に換算すると1日当たり100グラム)入れたマウスは6・6%、3%(同600グラム)のマウスは11・7%になった。
腎臓の周囲にある脂肪組織の重量も、乾燥キノコを摂取したことで蓄積が抑制された。飼料のマウスは0・98グラム。これに対し、乾燥キノコ0・5%のマウスは0・72グラム、3%だと0・62グラムだった。
実験結果を踏まえ、同社は、キノコ類の継続的な摂取が腸内細菌のバランス改善や肥満の抑制効果につながると結論付けた。
研究に参加した「きのこ総合研究所」の清水崇光研究員は「1日当たり100グラムというキノコの摂取量は、日常生活で摂取できる現実的な値」と指摘。その上で、今後の課題として、「ヒトも同様の効果があるかどうか検証したい」としている。