透明なビニールのような膜に包まれたタコかイカの足のような不気味な姿。驚くなかれ、スッポンタケの一種「タコスッポンタケ」だ。
「卵」と呼ばれる透明な膜がパンパンに膨らんで限度に達すると、ある日突然、風船が破裂するように中身が露出する。
タコの足のように見える部分は、4本から多くて12本とまちまちで、ぬめぬめとした触手を空に向かって伸ばしながら、腐ったカニのような腐敗臭を放ち、その匂いにおびき寄せられたハエを介して、胞子を運ばせる仕組みだ。
その異様な姿から、海外では「悪魔の指」と呼ばれていて、匂いを嗅いで気分を悪くする人も続出だとか。
もともとは、ニュージーランドやオーストラリアが原産だが、1914年~1918年の第一次世界大戦で、軍需品の荷物のあいだに紛れ込んで世界中に広がり、’80年代には北米大陸で自生しているのが確認されている。
菌類学者のデヴィッド・アローラとウィリアム・R・バークは、キノコに関する著書で、1982年にカルフォルニアで貨物船に運ばれてタコスッポンタケが見つかったと書いている。
アローラ博士らの本によると、こんな姿をしていてもタコスッポンタケには毒がなく食用可能だ。若い卵の状態のほうがオススメだというが、強烈な匂いに耐えられたらの話。しかしゲテモノ好きはどこの世界にもいて、「油で揚げると魚に似ている」と言われる。