自動車の廃タイヤの成分を分解し、天然ゴムを取り出せるキノコ菌を、公立鳥取環境大(鳥取市)の佐藤伸准教授(42)(バイオマス変換学)の研究グループが見つけた。3月に名古屋市であった日本農芸化学会で成果を発表した。佐藤准教授は「廃タイヤはリサイクルが進んでおらず、研究を再資源化に役立てたい」としている。(滝口憲洋)
自動車のタイヤは、主原料の天然ゴムに硫黄を加えることで弾力性を持たせている。ただ、古くなると燃料として焼却したり、粉砕して他の用途に使われたりし、天然ゴムとして再資源化されることはほとんどないという。
佐藤准教授は、木材の主成分を分解して腐朽させるキノコ菌に着目。「ゴムの分解にも応用できるかもしれない」と、約3年前から県内のキノコ40~50種類を調査してきた。
フラスコ内に木粉を敷き、その上に置いたゴム片にキノコ菌を植え付ける実験を実施。智頭町の山中で見つけたシロカイメンタケと大学の裏山で採ったシハイタケが、ゴムから硫黄を分解することがわかった。佐藤准教授はこれまでに、海外で生育するキノコ菌で同様の作用を確認していたが、今回の2種類の方がより天然ゴムを傷めずに残すことができたとする。
キノコ菌が分泌する酵素が関係しているとみられるが、なぜ分解できるのか詳細はわかっていない。現在、大手タイヤメーカーの支援を受けてメカニズムの解明に向けた研究を進めており、現状では約3か月かかる菌の繁殖期間の短縮などに力を注ぐ。
日本自動車タイヤ協会(東京)の調査では、2017年の廃タイヤ103万4000トンのうち、ゴムとして再生利用されたのは11万8000トンと全体の11・4%にとどまる。化学薬品を用いてリサイクルする技術はあるが、コストが高く、6割超は工場などで燃料に使われている。
佐藤准教授は「廃タイヤを燃やせば二酸化炭素の排出を伴い、環境への影響が懸念される。5年後を目標にリサイクルに生かす方法を見つけ、実用化につなげたい」と話している。