19日、金沢市中央卸売市場で行われた奥能登産原木シイタケ「のとてまり」の初競りは、最高級品「プレミアム」1箱(6個)に17万円の過去最高値が付いた。今年、石川県産ブランド農産物の初値はルビーロマンが111万円、能登志賀ころ柿10万円などいずれも最高値を更新。県内業者が買い支える「地元愛の強い競り」が理由の一つとみられ、消費の持ち直しも追い風に、関係者は県産ブランドの確立をさらに図る。
県産食材のブランド化に取り組む「ブランド食材プロデューサー」の白田典子さん(良品工房代表)によると、石川は他県と比べ、最高値の品を地元企業が購入する割合が高いという。
今年はルビーロマン、能登志賀ころ柿のほか、加賀丸いもが5万円(5個)で過去最高値を更新した。今年デビューしたナシの新品種「加賀しずく」は1箱(6個)10万円で競り落とされ、いずれも県内の飲食店や宿泊施設が購入した。
白田さんは「石川の生産者や開発者は商業的に成功するためハードルを下げるのではなく、腕を磨く。その努力に地元の業者が応じ、高め合っている」と指摘する。
ルビーロマン研究会は市場で成功するブドウ作りのため、小売り、食品加工業者を交えて議論している。大田昇会長は「自らの規格を守り、ブランドを維持したい」と強調する。
今年、5万円の加賀丸いもを購入した金沢市のホテル日航金沢は、来年2月末まで「加賀丸いもフェア」を開催している。生産地の小松や能美からのレストラン利用が増え、新規客の獲得につながっている。
一方、課題もある。ルビーロマンは市場投入10年目を迎え、海外から引き合いが増えたが、後継者の確保、育成が進んでおらず、出荷量は初年度と大差がない。大田さんは「販路開拓を進めながら、若者の就農環境も整えていきたい」と語った。
19日ののとてまりの初競りでは、最高級品を金沢市のレストラン「ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ」が購入した。
通常版6個入り3箱、8個入り4箱も競りに掛けられ、3万3千〜4万9千円で取引された。昨年は1箱1万〜3万円台だった。奥能登原木しいたけ活性化協議会の垣内吉雄会長は「生産農家のためブランド価値を上げたい」と話した。